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グリシンのはたらき
からだを助ける
グリシンは、体の中で、また、他の物質との関わりでさまざまな生化学的作用を起こします。
タンパク質を作るアミノ酸
人間など動物の筋肉や皮膚の細胞はタンパク質から作られていますが、 このタンパク質は、アミノ酸という物質が、鎖のように繋がってできています。
グリシン(Glycine,Gly,G)はタンパク質を構成するアミノ酸の一種です
- タンパク質
- 主なアミノ酸
- コラーゲン
- Gly:33%
Pro又はHyPro:20%
- エラスチン
- Gly:29%
Ala:20%
- ケラチン
- Cys:35%
Ser:23%
Gly:16%
- セリシン
- Ser:31%
Gly:11%
からだの機能にかかわる生理活性物質を助ける
グリシンは、命あるもの(生体)のさまざまなはたらき(機能・活動)にかかわる生理活性物質の材料になります。
他の物質代謝にかかわるグリシン
グリシンは肝臓での解毒作用にもかかわっています。
水に溶けないものは排出されにくいのですが、グリシンと結合することで水に溶けて排出されるものもあります。
具体例として、トルエンや安息香酸はグリシン抱合により馬尿酸として排出されます。
胆汁酸とグリシン
脂質代謝に重要な役割を担うのが胆汁の中の胆汁酸です。胆汁酸は通常、アミノ酸と結合した抱合型胆汁酸として胆汁中に分泌されます。このうち、約1/3はタウリンと結合したタウロコール酸ですが、残りの約2/3はグリシンと結合したグリココール酸になります。抱合型胆汁酸は、脂質の消化と吸収を助ける乳化剤として働きます。
俗に「貝類は肝臓に良い」と言われていますが、グリシンは貝類に多く含まれ、このような脂質代謝に関係していると考えられています。
貝類のグリシン含有量(100g可食部中) 五訂食品成分表より
- あさり / 640mg
- あわび / 1200mg
- かき / 540mg
- さざえ / 1700mg
- しじみ / 350mg
- はまぐり / 510mg
アルコール代謝とグリシン
グリシンがアルコール代謝を促進したり(1)、肝機能を正常に保つ(2)という報告があります。
また、アルコール以外にも、エンドトキシン(内毒素)による肝障害にもグリシンが有効である(3)との報告もあります。
参考文献
- (1)Iimuro Y. et al., Gastroenterology. 1996 May;110(5):1536-1542.
- (2)Senthilkumar R.et al., Clin. Exp.Pharmacol. Physiol., 2004, 31(7),456-61
- (3)Ikejima K. et al., Am J Physiol., 1996, 271(1 Pt 1), G97-103.
グリシンの代謝
グリシンは主に次のように代謝されます。
グリシン+テトラヒドロ葉酸+NAD+
↓
CO2+NH3+メチレンテトラヒドロ葉酸+NADH+H+
テトラヒドロ葉酸は核酸塩基合成、アミノ酸代謝などでC1ユニット転移酵素の補酵素の役割をします。
他にL-セリンに変換される場合もあります。